引き算
こんにちは、最近面白いことが何一つないデザイナーの佐藤です。
今回紹介する映画は大好きな北野映画の一つ『HANA-BI』です。
この映画を初めて観たのは小学生の時でした。最初はあまり面白さを感じていなかったのですが、年齢を重ねるごとに好きになっていった作品です。
そしてデザイナーとなった今、改めて観ると勉強になることも多かったのでその辺を書いていきたいと思います!
あらすじ
刑事・西(ビートたけし)は、張り込み中の失敗で部下を死なせ、別の部下を重傷にしてしまう。妻は不治の病に侵され、追い詰められた西は、借金を返すために銀行強盗を決行。警察や裏社会に追われながら、残された時間で妻と静かな旅に出る。
暴力と静けさ、死と美が対比的に描かれる、喪失と愛の物語。
省かれた間
多くの映画が状況を理解させるためにカットを重ねるのに対して、北野武は徹底して説明を省きます。
例えば本作品でも暴力シーンにおいて、殴るというアクションと倒れるというリアクションの間にあるべくプロセスを省くことでリズムが生まれ、鋭利でより痛みを感じるシーンとなっていると思います。
またセリフをカットし沈黙が続くことで、登場人物の内面・感情がより高まっていくように感じました。まさに沈黙こそが最も雄弁なセリフである、ということを体現していると思います。
絵画
この作品を観ていると映画=動画のはずなのに絵画に近い感覚を感じました。
カメラを固定し正面から対象物を捉えることで、映像がまるで一枚のキャンバスのように。そしてそこにキタノブルーが加わることで、現実感が薄くなり死後の世界のような透明感を与えていると思いました。
また、作中で大杉漣が描く絵が子供っぽいタッチだけどどこか不気味で、作品全体に「狂気」と「純粋さ」を加える装置として機能していました。ちなみにこれらの絵は実際に北野監督本人が描いたもので、相変わらずの多彩っぷりを発揮しています。
音楽
北野作品とセットといえば久石譲の音楽。個人的に久石譲の音楽が好きっていうのもあるのですが、作中の音楽があまりにも美しく、そして悲劇的でとても印象的でした。しかしそれ以上に印象的だったのが音のない世界。
特にラストシーンの波の音と2発の銃声、そして静寂。音楽を流すシーンと、あえて環境音のみのシーン。この対極的なシーンがものすごく印象的で、より一層感情が持っていかれました。
生と死
この作品のテーマがタイトルにもあるように生(花)と死(火)という相反する二つの要素。
主人公が行使する無慈悲な暴力(火)と余命いくばくもない妻に見せる、不器用で献身的な優しさ(花)。この二つを別のものとして描くのではなく、「花火のように死に向かうからこそ生が輝く」という一つの現象としてパッケージしています。主人公の暴力は、妻との最期の時間を守るための手段であり、その矛盾が切なさを増幅させます。
まとめ
感情を説明するセリフ、状況を説明するナレーション、派手なカメラワーク。それらをすべて捨て去り、役者の顔と、計算された構図や沈黙だけで物語を成立させていました。
何かを表現する時に人はすぐに何かを足したくなると思います。でもこの作品を観ると、表現は何かを足すことではなく、余計なものを削ぎ落として本質だけを残すことなんだと改めて痛感しました。
自分もデザインをする時に何かを付け足すのではなく、本質は何か?それを見極めて余計なものを削ぎ落としいけるよう頑張っていこうと思います。




