8 Mile:あなたはタンクトップの気持ちを考えたことがありますか?エミネムはあります。
雑談
はい、どうも!最近バリカンを買い替えたおかげで週一のセルフ坊主が捗って捗ってしょうがない飯塚です!
ここ5、6年ずーっと坊主で代わり映えないので、少し伸ばして金髪坊主にでもしてみようかと企んでいます。
さて金髪坊主といえば、僕くらいの世代はみんなエミネムを思い浮かべるんじゃないでしょうか?
今日ご紹介する2002年公開の『8 Mile』をもちろん皆さんご存知でしょう。当時この作品を見た中学生の僕は衝撃を受けました。「うわー。金髪坊主かっこよ…ひっぷほっぷ?かっこよ…」と。それからずっとエミネムの曲がリリースされるたび、CDについていた歌詞カードと和訳を睨みつけながら聞いて過ごす日々を送りました…
衝撃から約10年後、作品の舞台となっているデトロイトに実際に行く機会があったんですが、ラジオで流れる曲はほぼ「エミネム or メタル」の2択で、その他は当時流行っていたThe Chainsmokersがたまに流れるくらいというローカルの支持がすこぶる強いラッパーでした。
あらすじ
ミシガン州デトロイトを舞台に、エミネムの半生を本人が演じている半ドキュメンタリー作品です。今や誰もが知っているエミネムですが、決してその人生は順風満帆ではありませんでした。ひょんなことから家も車も失い、母親と住むことになったエミネムは、なんとか音楽で成功しようとバイトをしながらその日暮らしの貧しい生活を送ります。
彼が打ち込んでいた音楽「ヒップホップ」は黒人文化と言っていいほど、当時のラッパー、DJを占める黒人の割合がとても多いコミュニティでした。黒人だらけのコミュニティの中で白人というだけで目をつけられてしまい、単純にラッパーとしてのスキルを認めてもらえない葛藤の中で、彼は「ラップバトル」という方法で自分の技術をメキメキと発揮していきます。「白人」であることがハンディキャップとして足枷になる珍しい文化の中で、もちろん「白人」であることを差別的な表現で罵られながらもラップのスキルだけでのし上がっていくバトルシーンは今見ても鳥肌もんです。
感想
前回紹介した50Cent主演の『Get Rich or Die Tryin’』のようにギャングスタ強めではないのですが、その分ラップで揉めるシーンが数多くあります!なんでこんな表現が思いつくんだろう?と感心するほどに、言葉の扱いが秀逸です。作中の好きな言い回しの1つを紹介しましょう!
ガリガリのエミネムがゴリマッチョな対戦相手ロトに向かって、
『お前のタンクトップが「ロトさんマッチョすぎてフィットできませーん!」って叫んどるで!』
と、マッチョに着られているタンクトップ目線の感想をコミカルに表現しているところです。笑
もちろん英語が分からなくても日本語字幕で十分楽しめますが、2回3回と見直して英語字幕で意味をちょっと調べながら見るとまた違った面白さがあります。例えばラップバトルでよく使われるネームドロップという手法で、有名人や団体(作中では過激派思想団体などのネームドロップが登場)の名前を用いることが多くあるんですが、1回聞いただけだと、ん?それ誰?ってなっちゃうところを一時停止してググりながら見るなど、何回も観ることができる楽しみ方のバリエーションがあります。
あと、作中に出てくるヒロイン的存在アレックス(演:ブリタニー・マーフィー)が、とにかくかわいいです。ラップに興味がなくても、彼女演じるアレックスをぜひ見てほしいです。残念ながら彼女は2009年に心不全で亡くなってしまっているんですが、個人的にこの作品のブリタニー・マーフィーが一番本人とギャップがあるのにも関わらず、ハマっていて好きなので、ぜひ見てください。
余談
余談ですが、DVD特典でついていたメイキング映像に衝撃のカットがいくつか収められていました。作中に出てくるクラブの「Shelter」で、オーディエンス役として集まってもらっていたエキストラ vs エミネムのバトルシーンを、本編では使うかどうか分からないけどとりあえず撮ってみよう!というものでした。集められたエキストラは実際に現地のラップ好きの集まりなので、ステージに上がってラップをするなんてお茶の子さいさいです。しかも、エミネムを相手にできるんだから一発カマして俺を認めさせてやろうくらいに気合いが入っています。しかし、対するエミネムは連日の撮影の疲労や、使うかどうか分からないシーンの撮影ということで、声は出さずにラップをしている身振り手振りだけで応戦をします。使えそうな映像が撮れたら、後からラップの声を入れる予定だったのでしょう。
数人のエキストラがステージでエミネム相手にラップバトルをし、エミネムは無言のまま手振りだけで応戦しました。そこでなんとオーディエンスからブーイングが起こります。「バトルで勝ち上がったラッパーのくせに、ここではラップしないのかよ!」と。ブーイングを受けながらも声を出さずに1人、2人とやり過ごしたエミネムでしたが、あるタイミングでマイクをコツンコツンと叩き、まるでスイッチが入ってなかったことに気づかずにラップをしていたかのような演技から怒涛のフリースタイルをはじめます。もちろん、オーディエンスは大騒ぎ。作中のラップバトルはしっかりと台本が用意されていると思いますが、エキストラ相手のフリースタイルは本当にぶっつけ本番、なのにキレキレ。デトロイトで頑張っているローカルのラッパーたちをバッサバッサと何人も実力でねじ伏せていくエミネム。そして、その姿に賞賛の叫びをあげるオーディエンス役の地元のヘッズたちを見て、台本があってもなくてもあんまり変わらないクオリティでラップができるから認められたんだな….としみじみ思いました。
弊社が運営しているストリートWebメディア『Represent』でもエミネム特集の記事があるのでぜひチェックしてみてください!