HOUSE OF GUCCI(ハウス・オブ・グッチ)から見るブランド経営

Brand Finance Apparel 50で2位のGUCCI

毎春、イギリスのブランドファイナンス社から発表される『Brand Finance Apparel 50』。あらゆる数値から世界のアパレル企業のブランド力を示すこのランキングにおいて、この3年間(2019-2021)の話題の多くはGUCCI(グッチ)が掻っ攫った。

理由は明確。2019年の5位だったその位置を、2020年には2位、2021年も2位をキープ。”往年の”ブランドだったGUCCIは若い人からも愛される”新しい”ブランドに蘇ったことはこのデータを見れば立証されていることがわかるだろう。
参考:https://brandirectory.com/rankings/apparel

 

創業者グッチオ・グッチのお金論

さて、映画『HOUSE OF GUCCI(ハウス・オブ・グッチ)』を観終えてから、私が真っ先にしことは「創業者を調べること」であった。GUCCIの創業者の名はグッチオ・グッチ。劇中、アダム・ドライバー扮するマウリッツォ・グッチの祖父にあたる人物だ。

グッチオは貧しい家庭に生まれながらも、成り上がりを決意し、低賃金に耐えながらも高級ホテルのウェイターを務めた。そこで彼は大勢の資産家たちの所作や振る舞いをインプットすることになる。資産家たちが何に喜び、何に怒るのかを彼らのすぐ近くで学び続けたグッチオは、その数年後にGUCCIを設立するわけだが、設立時に自身の信念として胸に刻んだ言葉が、まさに『ハウス・オブ・グッチ』らしかった。

「商品の原価には一切意味がない。むしろ、商品の売価が高ければ高いほど、その商品を所有する価値は高くなる。」

裏を返せば、マーケティングの教科書の一つとして掲げてもいい考えだとも言えるが、金持ちから学んだことを抽出した結果、「金持ちからどのようにお金を取るか」をとてもシンプルに言い表す創業者の”お金論”にハウス・オブ・グッチの片鱗を見た気がした。

 

家系、血筋、後継ぎ

「お家騒動」を描いたこの映画。観た者はどこか「創業家がかわいそう」的な感情が芽生えると思う。

しかしである。GUCCIは世界的超一流ブランドではあるが、ついこの間まで世襲で成り立っていたことを考えると、やはりファンドに売却した判断は正しかったんだろうとも思う。ファストファッションが台頭してきたこの新しいファッションの時代を生き抜くには、経営層に世襲ではない他の血を入れることが、会社存続ひいては業績拡大の大きなファクターになるのではないだろうか。とはいえファンドへの売却は話が別では?と思うかもしれないが、これも別の血の入れ方の一つにすぎない。

もしも、この映画をGUCCIの血筋のレディー・ガガやアダム・ドライバーの立ち位置からではなく、ファンドの会社の目線から見たら、さまざまなビジネスの判断の局面が見れただろうと思うと、ある意味でそっちの方が観たかったな、とさえも思った。

 

GUCCIの賭け

ここ数年ブランドイメージを上げているGUCCI。ここまでは会社売却が成功しているように映る。さらにこの映画はとても面白かったし(個人的にはレディー・ガガの女優っぷりが気に入っている。)、世間的にもとても話題になった作品であることには間違いはなさそうである。

しかしながら、映画の内容はブランドとしてのGUCCIのイメージを下げてしまう可能性を多く孕んだ内容だった。いや、むしろ実際にはイメージが下がった人も多いのではないだろうか。GUCCIは会社としてもこの映画を作ることに許可を出しているだろうから、映画を作る話が上がった際にどう考えたのか、経営層の判断が気になるところである。

今春のBrand Finance Apparel 50はもうすぐ。GUCCIにどんな数値が飛び出すのか、何位に落ち着くのか目が離せない。

投稿日 2022.02.18 / 最終更新日 2024.03.27

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